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坂口澪
¥350

祖母が遺したのは、
届かなかった一通の手紙だった。

「あの坂の上で待っています。ずっと。」

差出人の名前はない。
写真の裏には「昭和三十八年 夏」とだけ。

祖母は、誰を待っていたのか。
なぜ、その人の名前を誰にも話さなかったのか。

高校一年生の夏、
私は手紙の答えを探しに、長崎へ向かった。

石畳の坂。潮の匂い。夕焼けの海。
六十年前、祖母が見た景色の中に、
答えがあると信じて——

届かなかった言葉が、
時を超えて届く物語。

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